激しい豪雨の中、高速道路を飛ばす一台のHONDA CB1100R。
雷鳴と黒雲に、心が折れそうになるライダーは、激しい後悔のなかで、なんども引き返そうかと思うのだが、アクセルを開き続ける・・・。
果たして、彼はどこに向かっているのか。 「Dear life」@『RIDE13』Vol.01(モーターマガジン社)より
雷鳴と黒雲に、心が折れそうになるライダーは、激しい後悔のなかで、なんども引き返そうかと思うのだが、アクセルを開き続ける・・・。
果たして、彼はどこに向かっているのか。 「Dear life」@『RIDE13』Vol.01(モーターマガジン社)より
思いつきで走り始めたライダーを襲う試練
雨と知って走り始めたわけではなかった。
今日が あの日 だ、と不意に思い立って、バイクを走らせただけだった。
それが高速に乗った途端にこの悪天候だ。男の心は、ほんの数時間前まで祭り気分だったはずが、ものすごい土砂降りにあって、急速に萎えていった。
パーキングエリアで雨宿りをしても、雨は止む気配がない・・。
引き返そうか。男はなんども心の中で繰り返した。
再び走り始める彼の目的地とは、かの”聖地”。そう鈴鹿サーキット
しかし、結局彼は再び目的地に向けて走り始める。
彼のバイクはCB1100R。それは耐久レースの申し子。
豪雨の中であろうと、走り抜くことが困難な長距離であろうと、それをモノともしない、そういうバイクではなかったか?だとすれば、目的地にたどり着けないと思うのは、単に乗り手の問題ではないのか?ここで引き返そうと考えている自分自身が弱いだけなのではないのか?
自分に足りないものはなんなのか?走りだす決意と、走り続ける意志。それが自分にはあるのだということを、自分自身に証明するために、男は再び雨の中を走りだすのだ。
そして、彼はたどり着く。
そう、今日は あの日 だ。
すべてのライダーにとっての真夏の祭典。そこは聖地。
鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)が開催される、特別な日。
彼は鈴鹿サーキットへと向かっていたのだ。
レースに出場する多くのライダーたちと同じく、彼もまた、自分自身の耐久レースに打ち勝ち、豪雨を圧して、目的地にたどり着いたのだ。すべての走りを讃えるために。