この連載では“鈴鹿8耐”参加経験者に、経験者だからこそ知っているアレコレ情報をインタビューしていきます。「はじめての8耐」をより充実にしていきましょう!(インタビュワー:Akiko)

第二弾のインタビューにご協力いただいたのは、二輪業界のことはなんでもお見通し!ご自身でサーキットを走るのはいうまでもなく、二輪雑誌のライターを務め、幅広く活躍中の宮崎さんです。

宮崎健太郎氏:
バイク、クルマはもちろん、機内誌やファッション雑誌など、幅広く活躍するフリーライター。困ったときに質問すると大抵のことは教えてくれる、歩くWikipedia。

はじめてにしてすごいレースを体験。

Akiko:ずばり、はじめて8耐に参加したのはいつですか?

宮崎さん:最初に観戦しに行ったのは1987年でした。その年は、誰もがヨシムラ、久々の優勝か?と思ったところで終盤まさか転倒してしまい、ヤマハが8耐初制覇。ラップ数も200周の大台に突入というとても印象的なレースでしたね。次に行ったのは2年後の1989年。D.サロン/A.ビエラ組(ホンダRVF750)が優勝を飾った年でした。

詳しくは過去にご紹介しているので読み返してみてください

1989年は本命チームではない伏兵のサロン/ビエラ組の優勝・・・でしたが、実は終盤、彼らのRVF750は変な音を出して走っていたんです。エキパイにクラックが入っていたんですよね。ブラックフラグ受けて首位から落とされるか、とハラハラしつつ見てましたけど、結果はそのままゴールでした。

Akiko:それはライブならではの貴重な経験ですね・・。なにより無事でよかったです。そんなに大ごとなら次の日ニュースになったのでは?

宮崎さん:後日の自分の記憶ですけど、あまりそのことは雑誌記事とかで触れられていなかったと思います。

その会場にいた人たちにしかわからなかった出来事みたいな・・・メディアではカバー仕切れない、現地でしかわからない面白みが鈴鹿8耐にはあるんですよね。これはあらゆるスポーツのライブでも言えることでしょうけど、鈴鹿8耐は長丁場なのでその要素がより強いです。

Akiko:いつなにがどこで起きるかなんて誰も予想できないですもんね・・。ちなみに宮崎さんは鈴鹿サーキットまでどのように行かれているんですか?

宮崎さん:観戦の足ですか・・・? 超大変ですけど、クルマや電車よりバイクで行くことをオススメしますね。バイクでいくと相当疲れるけど、より一層その「夏」の記憶が強烈な思い出になるでしょう。バイクで鈴鹿8耐行く人は、本当にバイク好きな人ばかりですね・・・ただ2輪関連の仕事で鈴鹿に行くようになってからの私は、最近クルマばかりなんですけど・・・すみません(笑)。

Akiko:たしかに8耐が終わったあとはきっと自分の愛車が恋しくなってすぐにバイクに乗りたくてうずうずしそう。一度はバイクで向かう価値はありますね。みなさん、ぜひバイクで行きましょうっ!(笑)

鈴鹿8耐の最大の見所は?

Akiko:8耐の見所、魅力ってどこにあるのでしょう?

宮崎さん:1時間のスプリントレースをライダー交代しながらぶっ続け8時間戦うような鈴鹿8耐ですが、マシンやタイヤがきついのはモチロン、メカニックやヘルパーなどのスタッフもキツイです。そしてライダーが一番きついでしょうね・・・。

草ロードレースやサーキット走行会に参加したことがある人ならわかると思いますが、20分でも全力でレースペースで走るのって相当疲れます・・・。それを1スティント、真夏の気候の中でガチ走りして「タスキ」をつないでいくわけですから・・・8耐ライダー全員尊敬の眼差しで見てしまいます。

ワークスチームとプライベーターでは、鈴鹿8耐の目標・目的は変わってきますが、みんなに共通するテーマはまず「完走」することです。勝利を本題とするワークスチームも、1つでも上の順位というものを目指すプライベーターも、とにかく「完走」することが目的クリアの最低条件になります。

8耐を「完走」するために、転倒したライダーは炎天下マシンを押してピットに戻ったり、メカニックは一生懸命マシンの修復作業に時間を費やしたりと、超人的な頑張りを見せるんですよね。チームによって予算や技術のレベルはもちろん違いますけど、その一生懸命さには上下はつけられないと思います。

その人間ドラマが、鈴鹿8耐最大の魅力で見所だと、私は思います・・・。

Akiko:日頃レースを経験したことがない私のような素人の立場から観戦となると、つい順位に目が行ってしまいますが、冷静に考えてみると完走することって凄いことですよね。今年の観戦は順位ばかりではなく、そういった視点で私も楽しんでみようかな。

初心者にぜひ教えてあげたいイベントとかありますか?

Akiko:見逃せない! という8耐のイベントを教えてください。

宮崎さん:土日に行ける方は「トップ10トライアル」は必見ですね。土曜日に予選10位までのチームから、各2名のライダーが1発タイム計測のスーパーポール方式で決勝1〜10位グリッドを競う「トップ10トライアル」は、鈴鹿8耐で見逃せない「ショー」のひとつで非常に盛り上がります。

また土曜日夜の「前夜祭」も、鈴鹿8耐の「お祭りムード」を満喫できるイベントなので、ぜひ体験していただきたいですね。

トップ10トライアルでコースインするF.C.C. TSR HONDAのCBR1000RR。ひとりのライダーの走りに、会場の全視線が集中するわけですから、ライダーにとってはこの上ない喜びでしょう(プレッシャーもハンパないでしょうが・・・) ©︎モビリティランド/鈴鹿サーキット

決勝は最初の1時間と最後の1時間は自分の席に陣取って、コース上の戦いにじっくり注目したいですね。その間の6時間はずーっと炎天下で見続けていると、暑さでカラダの具合が悪くなることもあるので気をつけてください。

でも、その6時間の間にクラッシュやトラブルなどのドラマがあったり、同一周回の接戦がずーっと展開されたりすることもあるので、私はついつい暑さを忘れてずーっとコース脇で見入ってしまうこともあります(苦笑)。

今年の8耐の注目ポイントを教えてください!!

Akiko:今年の注目ポイントや選手を紹介してください。

宮崎さん:注目選手は・・・まだ全チームの陣容が明らかになっていませんが、連覇中のヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームの中須賀克行選手が連覇記録を伸ばせるか・・・? また復活したホンダのワークスチーム、HRCが打倒ヤマハを果たすか・・・が今年最大の焦点になりますね。

あと、カワサキのチームグリーンで出場するSBK(世界スーパーバイク選手権)3連覇王者ジョナサン・レイが、どのような鈴鹿8耐での走りを耐久仕様のZX-10RRで魅せるか・・・も大いに注目しています。

「はじめての8耐」で持っていった方が良いもの

Akiko:8耐観戦であると便利なモノ、とかありますか?

宮崎さん:私が初めて鈴鹿8耐を見た1980年代後半は大ブームという状況だったので、とにかくコース内を歩いて移動することが大変でした。休日の原宿の竹下通り以上の人口密度でしたね(苦笑)。本当に人が多すぎて、レース後に会場からなかなか出ることができなかったくらいです。

ただ、広い鈴鹿サーキットを移動すると結構疲れることには今も昔も変わりありません。スニーカーやサンダルは長時間の歩行でも足が疲れない、履き慣れた一足で行きましょう。あと帽子などの日焼け対策・・・とにかく汗をかくので、タオルやTシャツは余分に持っていくといいですね。

あと持っている人は・・・ですけど、双眼鏡持っているとグランドスタンドからピット作業の様子とか、スタッフの表情とか見ると楽しかったりします。オタク的楽しみ方ですが(笑)。あと最近では必需品となったスマホを充電するための、モバイルバッテリーも必携ですかね?

8耐は場内FMで聴くことができ、ここ数年はニコ生やFacebookで生配信もされているようなので、こちらもぜひチェック!

Facebookライブ配信
鈴鹿サーキット公式Facebookを利用して、 "コカ·コーラ"鈴鹿8耐決勝レースを英語およびタイ語で、鈴鹿4時間耐久ロードレース決勝レースをタイ語実況で配信!
※日本を含むテレビ放送される国・地域では、Facebookでのライブ配信はありません。
配信日時 7月28日(土)鈴鹿4耐決勝/鈴鹿8耐 予選&TOP10トライアル 8:30~13:30(予定)
7月29日(日)鈴鹿8耐決勝 10:30~20:00(予定)
実況 英語・タイ語

鈴鹿サーキット近辺のうまいご飯屋

Akiko:なかなか鈴鹿サーキットに行ったことがない方にとって食べ物はとっても楽しみだと思うのですが、宮崎さん的に美味しい8耐おすすめのお店はなんですか?

宮崎さん:鈴鹿サーキットでの美味いものですか? そりゃやっぱり大会スポンサー様への感謝を込めて"コカ・コーラ"ですね!(笑)。ちなみにコカ・コーラがメインスポンサーになったのは今から30年以上前の1984年の大会が最初なんですよ。

先ほども述べましたが、私の初の8耐観戦のときは高校生でしたからお金がなくて・・・コカ・コーラって炭酸でお腹が膨れるでしょ? ノドを潤して、火照ったカラダを冷やしてくれて、そして空腹も紛れる・・・最高の飲み物です(笑)。

Akiko:真夏のコカ・コーラって最高ですよね!夏場を想像したら、なんだか急に喉が渇いてきました(笑)

グランドスタンド裏のGPスクエアなどでのスペースでは様々なイベントブースが展開されますが、もちろんコカ・コーラのブースもあります! ©︎モビリティランド/鈴鹿サーキット

Akiko:前夜祭から参加する方もいるので鈴鹿サーキット近辺の食事情も知っておきたいのですが、美味しいご飯屋さんをぜひ教えてください。

宮崎さん:近辺のウマイ店ですか・・・? 駆け出しの編集者のころから通っていたこともあり、習慣化されているのか今も鈴鹿に行くとついつい「破天荒」には行ってしまいます。席数の多い町中華・・・という佇まいで、8耐に限らず鈴鹿に行く方にはおなじみの店です。お時間あれば、ぜひトライしてみてください。

あと・・・時間があえば行く鰻屋さんもありますけど・・・混むと嫌なので教えません。あしからず(苦笑)。

ここはおすすめ、宿泊施設

Akiko:はじめて8耐に参加するなら、気合いを入れて前夜祭から参加する方も大勢いると思うのですが、鈴鹿サーキット周辺でおすすめの宿泊施設はありますか?

宮崎さん:コースまで歩いて行けるサーキットホテルが予約できればサイコーですけど、当然ながら人気があってすぐ予約一杯になっちゃいます。現実問題、サーキット近辺、そして平田や白子などのホテルも確保するのが難しいので、四日市や津など近隣の市の宿でも確保できればラッキーなのが実情です。とにかく、宿の確保は最優先事項ですね!

Akiko:そうなんですか!それは大変だ。もう今のうちにチェックしておかなきゃ!!(汗)

鈴鹿8耐を観戦することの「魅力」

Akiko:最後に、鈴鹿8耐を観戦する「魅力」をぜひ教えてください。

宮崎さん:これはサーキットに限らず、2輪を趣味にする人なら世界共通の感覚なんだと思うんですけど、4輪に比べると2輪の世界は「連帯感」が強いですよね? 

例えばフェラーリ愛好家とスバルサンバー愛好家では、なかなか話が合うってことムズカシイと思うのですが、2輪の世界では・・・MVアグスタ愛好家もホンダ・スーパーカブ愛好家も、ある程度話が通じやすいんですよね。

転倒すると痛くて悲しい・・・雨が降ると濡れてわびしい気分になる・・・冬は寒くてツライ・・・でも春や秋の好天の1日は、乗っていて気分がサイコーだ! みたいに、2輪はどんな機種のオーナー同士でも、共通する体験がベースにあるので、話をしやすいと思うんです。

鈴鹿8耐は、スポーツバイク好きが全国から集う祭りなワケですから、そりゃもう、会場の「連帯感」は強いと私は感じます。フツーのスポーツ観戦ですと、贔屓チームのライバルが優勝したりしたら「くそー!」と思うものですが、鈴鹿8耐は素直に勝者を讃える気持ちに多くの人がなれるでしょう。

ライダー、チームスタッフ、サーキットのマーシャル、売店のおじさん、レースクイーンのお姉さん、そして私たち観客・・・その場にいる全員が同じ8時間を戦った「同志」のような気分になれるんですよね。だから優勝チームや上位入賞チームはもちろん、無事完走できたチームすべてを、「仲間」を迎え入れる感覚で。

Akiko:バイクに乗った時の興奮や楽しさ、時には辛さも、バイクに乗った経験がある人にしか共感できないですもんね。
8耐ってフェスなんだけど、どこか他のフェスとはちがうと思っていたのですが、2輪の世界は「連帯感」ということにすごくしっくりきました。

自らの体験エピソードや8耐の魅力をたっぷりお話していただきました。宮崎さん、お忙しい中ありがとうございました。

“鈴鹿8耐”攻略法が知りたい!
参加経験者に過ごし方を聞いてみた。【はじめての8耐インタビューvol.1】