"コカ·コーラ"鈴鹿8耐の歴史のなかで、多くの人々の記憶のなかに残るマシンたちを紹介する連載です。今回は2004&2005年大会に、果敢なチャレンジをした異色の耐久マシン、OV-23XVです!

一番レーサー向きでないモデルをベースに開発!?

名門の鈴鹿レーシング、モリワキに在籍していた佐藤健正により、1982年に創設されたオーヴァーレーシングは1984年から独自の車体を用いたロードレーサーを数多く製作。全日本選手権、英国選手権SOS(サウンド・オブ・シングル)、欧州スーパーモノ選手権、そして鈴鹿8耐などで活躍しています。

1990年代には、ネイキッドブームを背景にスタートしたスズカNK-1で、ヤマハXJR1200で1995、1996年を連覇。また1997年の鈴鹿8耐ではヤマハYZF1000サンダーエースで、Xフォーミュラ優勝(総合13位)という立派な成績を残しました。

そんなオーヴァーレーシングが、2004、2005年の鈴鹿8耐に持ち込んだのがOV-23XVなのですが、多くの人はその試みに度肝を抜かされました。独自のアルミ合金製フレームに搭載されるのは、ヤマハのクルーザーモデル、XV1700ロードスターのエンジン・・・1,670ccの空冷OHVツインはとても、ロードレース向きのパワーユニットではありません・・・。

画像: 美しいフレームが見る者の目をひくオーヴァーOV-23XV。ラムエアボックスへのダクトのレイアウトもユニークです。ヤマハXV1700のチューニング用のパーツが市場にまったく存在しないため、ロードレーサーへの改造には多くの苦労が伴いましたが、その試行錯誤が後々、ものづくり集団としてのオーヴァーレーシングの財産になったのでしょう。なお2004年には、OV-23XVはオランダのアッセンで開催されたツインレースに、2005年にはアメリカ・デイトナに遠征参戦しています。 www.over.co.jp

美しいフレームが見る者の目をひくオーヴァーOV-23XV。ラムエアボックスへのダクトのレイアウトもユニークです。ヤマハXV1700のチューニング用のパーツが市場にまったく存在しないため、ロードレーサーへの改造には多くの苦労が伴いましたが、その試行錯誤が後々、ものづくり集団としてのオーヴァーレーシングの財産になったのでしょう。なお2004年には、OV-23XVはオランダのアッセンで開催されたツインレースに、2005年にはアメリカ・デイトナに遠征参戦しています。

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4気筒1,000ccの国産スーパースポーツが主流となっていた当時の鈴鹿8耐に、ドンキホーテ的とも言えるOV-23XVを製作した動機を、オーヴァーレーシング代表の佐藤健正はこう語ります。

「かつてTTF1にOW01が出てきた頃と同じで、もはやプライベーターが独創性を発揮できるような状況では無くなってしまいました。オーヴァーレーシングの基本はモノ造りにあるわけですから、それでは面白く無いんです。」

「一番サーキットに向かないバイクは何かと考えた時に、まずはXV1700とVMAXが候補に挙がったのですが、V-MAXは4気筒で速くなって当たり前のように思ったんで、XV1700を選んだんです。
誰もやらないようなバイクを早く走らせるためには、いろいろと工夫しなければならないわけですが、そこに従来にない発想や、他にないものが生まれ、最終的には市販品にフィードバックされることになるんです。そういう考え方や姿勢はこれからも大切にしたいですね。」

画像: インジェクションはホンダVTR1000系から流用。ラムエア加圧により、最高出力135馬力、最高速度227km/hをマークする。しかしエンジンの大きさ・重さは如何ともし難く、乾燥重量は189kgというヘビー級の重さでした。 www.over.co.jp

インジェクションはホンダVTR1000系から流用。ラムエア加圧により、最高出力135馬力、最高速度227km/hをマークする。しかしエンジンの大きさ・重さは如何ともし難く、乾燥重量は189kgというヘビー級の重さでした。

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残念ながら両大会ともに、鈴鹿8耐のチャレンジは予選落ちという結果に終わりました。しかし、ロードレース向きではないマシンで、トップレベルのレースである鈴鹿8耐に挑戦するという試みは大きな話題となり、トッププライベーターとしてのオーヴァーレーシングの心意気を感じたファンは少なくありませんでした。

近年の鈴鹿8耐では競技性の先鋭化により、このようなユニークなモデルが参戦する余地はなくなってしまったようにも思えます。しかし、いつの時代も独自のアイデアを最高の舞台で試したい・・・と考える人がいるのも、ロードレースの世界の面白いところです。OV-23XVのようなマシンの登場を、今後も期待したいですね!

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